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哀しきれんげ(その2)

そんなこんなで、金欠と損得感情の後押しによって自炊を決意したわしは、近所の西友に入っている「キャンドゥ」という100円ショップに向かった。
まず、醤油やだしの素や塩、コショウ、ふりかけ、カレールウ、レトルトごはんなど、基本的な調味料と日持ちのする食材を適当にカゴに放り込み、次に吟味に吟味を重ねて厳選4種のハードーー土鍋、れんげ、フライパン、どんぶりーーを購入した。わしは〝れんげ〟を使ってメシを食うのが好きだ。丼物、カレー、ラーメンスープ、どんな料理のときも使えるし、なにより一度にたくさんすくうことができる。それに、優しい口当たりがなんともいえない。赤子にとってのおしゃぶりが、わしにとって〝れんげ〟なのかもしれない。
次に、食品売り場へ移動し、白菜と豆腐とキムチの素と玉ねぎとにんじんとじゃがいもを買って家路についた、まではよかったが、途中で道に迷い、ずっしり重い買い物袋を両手にぶら下げて2時間も徘徊する羽目におちいったのは余談であるが、非常に辛かったので誰かに優しく慰めてもらいたいと思う。

その晩は土鍋に白菜と豆腐をぶち込んで煮た。
直径19センチの土鍋は本当に掘り出し物だった。白菜は「しなっ」となるまでかさばるが、ドーム型の蓋でふんわり押さえつければ、大量投入してもなんとかなる。具は2種類で肉もないが、「今夜は鍋♪」というムフフな気分を土鍋が演出してくれる。味付けも、だしの素とうすくち醤油でバッチリだ。よーし、今日はレトルトごはんも奮発して、雑炊なんか作っちゃうもんね!
と、鍋奉行~仕上げの雑炊へ、つつがなく食事行為がクリアされていくのと同時進行で、実はカレー(肉抜き)を作っていた。
その気になると徹底的にやる女、それがわしだ。とか言いながら、カレー製作中の鍋をかき混ぜた〝れんげ〟を使って、アツアツの雑炊を口に運んでいると、ふと口内の異様な感触に気がついた。
ーープラスチック製の〝れんげ〟は、熱責めに耐え切れなかったのか、ぐにゃりと無残に変形していた。
そのあわれな姿を見ていると、久々の自炊で浮きたった心が急速に沈没し、一人鍋の虚しさと、肉抜きの哀しさが怒涛のように女を包んだ。そして女は力なくその場にヨヨと泣き崩れたのであった(ウソ)。
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井上オークス

  • Author:井上オークス
  • 旅打ち競馬ライター。
    佐賀生まれ、愛媛育ち、京都在住。

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