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キャベツ

さっき、キャベツを1玉食べてしまった。所要時間約5分。
先月実家に帰った際に、親父がベジタリアンと化していたことが遠因である。
最近体調が悪いのは、野菜が足りんせいばい! と思い込んだ親父は、自分で買ってきたキャベツ、レタス、白菜、胡瓜、大根、人参、ブロッコリーなどあらゆる野菜にポン酢をかけてわしわしと食い漁っていた。今年に入ってから、ずっとこの調子らしい。飲んで帰ったあとにも、お茶漬け代わりに野菜をかっ込んでいる。
母親はわしの知る限りではかれこれ10年以上親父に愛想を尽かし続けているが、野菜を切って茹でて温野菜にして皿に並べてポン酢の瓶と一緒に食卓に置くくらいのことはしてあげている。嬉々としてはいないが、文句は言わない。
自分の親ながら、夫婦のことはよくわからない。わしにはとても真似できないと思う。
「きれいかやろ」
咀嚼の合間に、最近できたばかりの自慢の入れ歯を二カッと光らせる親父となるべく目を合わせないようにして、わしは胡麻和えにした茹でキャベツに箸を伸ばし、その素朴でシンプルな美味しさに衝撃を受けた。
というわけで、京都に帰るや否やスーパーでキャベツ(1玉78円。感涙)を買い求め、共同炊事場でそわそわと茹で(他の住人に見られるのが恥ずかしい。たま~に帰ってきて、大量のキャベツを茹でる人なんて、なんか変に思われる気がして)、むさぼり食っている次第だ。
「気持ちワルかろ? あの入れ歯の笑い顔」
満腹になった親父が寝床に引っ込んだあと、母親が言った。わしは深く頷いた。入れ歯が悪いとは思わないが、自慢するものではないと思う。
諦めとザマミロと少しの愛情が混じった声と、入れ歯の象牙色を思い出しながら食べるキャベツは、そこまで来ている春と、遠い家族の味がした。うーん、こんなことを書くつもりではなかったんですが。
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井上オークス

  • Author:井上オークス
  • 旅打ち競馬ライター。
    佐賀生まれ、愛媛育ち、京都在住。

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