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嘘トレ

「こんなとこで働いてないで、結婚しなさい」
と忠告してくれるお客さんがいる。「こんなとこ」に飲みに来るあなたは一体何者、と突っ込みたくなるが、ま、お仕事だから、「もらい手がなくて」とかなんとか、笑ってやりすごす。本日のお客もそうだった。
「俺は、女房のために家を建て替えた。あんたも、俺みたいな旦那を見つけえや。女の幸せは結婚や」
わしの幸せはわしが決めるんじゃ。と腹のなかで叫びながらにこにこしていると、定年間近というその人は酔いが回ったのか、妙に据わった目をしてわしを見た。
「あんたは、夜の仕事に向いてない。台所で料理を作るのが似合う女や。俺にはわかる」
異論はあるが、こんなお客の接客はけっこう楽ちんだ。ふんふん頷いていれば、まあ問題ない。
「俺があと20歳若ければ、あんたに割烹着を着せたい!」
なんだか盛り上がってきた。
「うちの会社の若い男を紹介してやる!」
うわ、面倒くさ、と困っていると、チーママからお呼びがかかって別の席へ移ることになってホッとした。
しかし「割烹着が似合う」といわれたのは初めてだ。
夜の店で働く女性は、夢を与える存在でなければならない。とよく聞く。「上手な嘘のつきかた」を体得したホステスが売れっ子になる。悪いことではないと思う。男心をくすぐり、楽しんでもらうのが仕事だから。嘘も方便なのだ。
稼いだ金は競馬に突っ込みます、なんて本当のことをいっては、夢もへったくれもない。夢を見ているのは、客じゃなくてわしである。
文章を書くときも、「もっと嘘をつかねば」と悩むことがある。嘘が上手い人は、おそらく想像力が発達している――すなわち、わしには想像力が足りない。だから夜の世界で嘘をつきまくって、嘘力=想像力を鍛えようともくろんでいる。が、成果が上がらん。つい本当のことをいってしまう。嘘をつくよりも楽だから、楽なほうに流れているのだ、たぶん。
嘘トレーニングの一環として、電話回線を通じて「かわいくって淫乱なんです」とアピールするバイト(詳細は秘す)をしたこともある。通話が続けば続くほどお金が貰えるのだが、3時間の拘束で得られた報酬は210円だった。わしの想像力、210円也。
ともかく。微塵も家庭的でない女でも「割烹着が似合う」といわれたりする。これをヒントにして、「家庭的キャラ」を演じ切って働けば、わしの幅が広がるかも。と、やらしいことを考えている。
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井上オークス

  • Author:井上オークス
  • 旅打ち競馬ライター。
    佐賀生まれ、愛媛育ち、京都在住。

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